fumimaro40’s diary

fumimaroはふつうの事務員。感じたままを。

出逢う③

美味しくお茶をいただいた挙句、自分は華道を習いたくて来たのだ、と告げた。反応が恐かったが、なんの心配もなかった。そんなちっぽけなことでは動じる訳もない。

「あら、嬉しいわぁ」と2階の教室へ案内してくれた。試しに暫く来てみればという言葉に甘え、私のお花との出会いが始まったのである。

後々気付いていくことなのだが、ゴッドマザーの教え方は、一般的な華道教室とは少し違っていた。最初に、だいたいこんなバランスで生けるのよ、と黒板に簡単なイラストを書いてみせた。

次は、花材選びだ。毎回3から4種類のセットがあり、好きなものを選んで良い。後は、こう言った。「好きなように生けてごらんなさい」黒板に書かれた、長い線にはどの花を、中くらいの線にはどれを、短いのには何を当てはめたら良いのか、それだけで時間は過ぎて行く。他のお弟子さん達は、どんどん仕上げて、ゴッドマザーに見てもらっていた。

1時間が経つ頃、「どお?」と声を掛けられた。よく分からないとしか答えようがなかった。「綺麗に入ったじゃないの」ん?褒められたのだろうか、そんな上手く行くはずがない。剣山に刺した花、全部抜き取られてしまった。お直しをしていただいたそれは、誰のものでもない、私の作品だった。私がイメージしたものを、壊さないようにして生けてくれたのである。「ね、良くなったでしょ。スケッチして、もう一度生けたんさい。」恐らく美術の授業より数段集中して描いた。そして、初めからやり直し、また見て貰う。

どれくらい繰り返しただろう。ある時から、スケッチした後の生け直しは免除されたが、その他のルーティンは続いて行った。

随分経ってから、多分高校生活を終える頃まで気づかなかったことがある。私と他の3名以外、10名くらいは、自分でお教室とお弟子さんを持っている先生だった。そういう、先生が習いに来る先生の門を、私は図々しくもたたいてしまったのである。どなたかのご紹介でもないのに。

この時の勇気や行動力を思うと、自らがとても羨ましくなるのであった。