fumimaro40’s diary

fumimaroはふつうの事務員。感じたままを。

出逢う

少し前に華道家が主役のテレビドラマがあった。なりたい顔ナンバーワン女優が演じたし、相手役が個性派ミュージシャンだったこともあり、放送前から高視聴率の期待大だったのを覚えている。実際どうだったかは調べていないので分からない。華道に、多分真剣に向き合っていた私としては、どうしたって見ずにはいられない。最初から、どんなお花なんだろう、どなたの作品なのか、そこへの注目だった。ストーリーにももちろん惹かれたが、毎回いくつもの作品が映し出される度に、見逃すまいと懸命に画面に向かっていた。

私が華道を習い始めたのは、高1の時である。周りは部活に入部したり、塾に行ったり。私も卓球部、美術部に仮入部してみた。部活そのものは楽しく感じられたが、どうも自分のいる場所ではない気がして仕方なかった。その居心地の悪さはなかなか消えず、期限を待たずに正式入部はしなかった。

きっと学校の外で何かをしたかったのだろう、自宅最寄駅周辺の探索を始めた。まず目に留まったのが、和裁教室の看板だった。母が着付けや組紐を教えていたので、和服には親しみを感じていた。針仕事が得意だとかそういうことではない。ただ、あの素敵な着物を自分でこしらえるなんて、かなり格好いいじゃん、だ。それでもひとりで門を叩くのは、だいぶ勇気を必要とする。思えば、高1にしておひとり様を体現していたのだ。

出迎えてくれたのは、上品なショートカットグレーヘアーのおばさま。意外にもツイードのスーツ姿だった。「今から興味を持って調べるなんて、偉いわねぇ」彼女の言葉に、紅茶をいただきながらなんかおかしいことに気づいた。そこは、習い事のお教室ではなく、高卒後に入学する専門学校だったのだ。向こうにしてみれば、2年後の受験生である。それでも丁寧に説明してくださり、またねと送ってくれた。

ネットで調べる、なんて出来ない時代だからしょうがないけど。でも、この〝看板を頼りに作戦〟が華との出会いをもたらしてくれたのだ。そこは、駅近の住宅地で看板も建物もひっそりとしていた。出迎えてくれたのは、和服姿のおばさま。「あら、今日は?」誰かと間違えているのかなぁと思いながら、実はお花に興味があり突然来てしまったと答えた。